桂 きみよ 先生
学科 短大家政科→短大生活文化学科→人文学部生活文化学科→人文学部人間栄養学科→人間栄養学部人間栄養学科
主な担当科目 給食管理学、臨床栄養学
勤務期間 1966年~2016年
- Episode
【短大家政学科から人間栄養学部へ──学科とともに歩まれた半世紀】
桂きみよ先生は、長年にわたり本学において栄養士・管理栄養士の養成に尽力されました。給食管理学実習、食事設計実習、臨地実習Ⅰ・Ⅱ、フードコーディネート論など、多くの科目を担当され、短大では臨床栄養学実習や校外実習も受け持たれ、学生の成長を温かく見守ってこられました。
桂先生は、外部講師との打合せも常に迅速かつ丁寧で、調理学実習の客員教授から厚い信頼を得ておられました。大量調理も得意とされ、先生の手料理はどれも絶品。なかでも「炒りなます」は、見た目も美しく味わい深く、今も卒業生の記憶に残る逸品です。約40年前、中国料理がまだ一般家庭に広く普及していなかった時代に、実習に多くの中国料理を取り入れられたことも印象的です。「パイクーハン」や、塩と油を入れた湯で茹でたレタスにオイスターソースを絡める前菜など、本格的な味を伝えられ、食文化への理解と関心を広げるきっかけとなりました。こうした取り組みには、短大で中国料理を教えてくださっていた楊萬里先生の影響があったと伝えられています。
印象的なエピソードのひとつに、NHKの「プロジェクトX」で紹介された「妻へ送ったダイニングキッチン」があります。この番組では、桂先生が研究グループの一員として、ダイニングキッチンの開発に関わった当時の様子を回想されています。戦後の日本において、食生活の改善と家庭環境の向上を目指したこのプロジェクトは、日本の家庭に「寝食分離」をもたらし、女性の生活を大きく変える契機となりました。
華奢な体からは想像できないほどの体力と行動力も、桂先生の大きな魅力のひとつです。ある年、海外研修に引率予定だった先生が、出発1週間前という直前になって急きょ参加できなくなる事態が起きました。桂先生は迷いなく手を挙げ、引率を引き受けてくださいました。しかも、既に抱えていた業務を猛スピードで片付け、ご家庭の調整も的確にこなし、必要書類の準備も滞りなく行って、予定通り出国。誰もが「この対応は桂先生にしかできなかった」と驚嘆し、今でも学科内で語り継がれる伝説の一コマです。
桂先生は、若い頃は厳格な指導で知られ、髪色や服装、爪の長さ・色など、身だしなみに関しては厳しく指導されていました。しかし、晩年には穏やかな人柄が際立ち、学生たちから「優しい先生」と親しまれていました。多くの卒業生にとって、桂先生との思い出は学びの原点であり、今も胸に残る宝物です。
(人間栄養学科 講師 翠川 美穂・助手吉池 由紀江)