岡堂哲雄先生

岡堂 哲雄 先生

学科 心理学科

主な担当科目 臨床心理学

勤務期間 2002年~2017年

Episode

1990年7月に東京で開催された第1回国際家族心理学シンポジウム(当時大学院生だった私もその前年に年に岡堂哲雄先生の集中講義を受講したこともあって参加したのですが)の参加者名簿が今も手元に残っています。実行委員長に岡堂哲雄先生、実行委員として花沢成一先生、国谷誠朗先生のお名前が掲載されています。この3人の先生方はのちに本学に在籍され、国谷先生は臨床心理学科が開設された2002年に残念ながら逝去されてしまいましたが、花沢先生は初代学科長として、岡堂先生は2004年に開設された臨床心理学研究科の初代研究科長として、現在の心理学科、臨床心理学研究科の礎を築かれました。それにしても臨床心理学科開設時にはこのビッグ・ネームが揃っていたのですから、凄いことだったと思います。ちなみにくだんの参加者名簿には臨床心理学科の設立時に講師として加われた野末武義先生、のちに教授として在籍された細井啓子先生や白﨑けい子先生のお名前も見受けられます。

岡堂先生は2002年の本学着任時にはすでに古希を迎えられるお年であったにもかかわらず、明晰な頭脳は2014年の退任時までずっとご健在で、私たちの羅針盤として針路を導いてくださいました。

私も2002年に本学に着任しましたが、そのころは学科、研究科の新設や改組が目まぐるしく、私も着任早々から臨床心理学研究科の新設のための申請書類の作成のため、岡堂先生のお手伝いをさせていただきました。週末に提出した書類を週明けまでに修正して再提出するなどが日常茶飯事でした。当時、私は引っ越し早々で、自宅にはFAXを備えておりませんでした。それで岡堂先生もご不便なさったのでしょう、ある日曜日に「こことここを修正して明日持ってきて下さい」との先生からの指示がなんと速達で届きました。慌ててFAXつきの電話機を購入に走ったのは言うまでもありません。

そのような岡堂先生も当初は本学にそれほど長居をされるおつもりはなかったらしく、いつ退任してもよいようにと頻繁に研究室の書棚の整理をされて、その音が隣室の花沢先生の耳にも届いておりました。花沢先生は「岡堂先生はしょっちゅうやっているんだよ」と笑っておられましたが、その花沢先生が2006年に在職中に急逝され、花沢先生が担っておられた重責も引き受けてますますお忙しくなったのは皮肉といえば皮肉なことです。

岡堂先生が86歳で旅立たれたのは本学を退任された4年後の2018年のこと。晩年まで私たちを先導してくださったことへの感謝は尽きませんが、もう少し長くご自身の老後の生活も謳歌していただきたかったと悔やまれます。

(心理学科 教授 小澤 真)